中国四川省地震救援ニュース 103

久しぶりにYさんレポートをお届けします。
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「重陽」という言葉をご存じだろうか。
陰暦(旧暦)の9月9日を日本でも「重陽の節句」、「菊の節句」と呼ばれ、五節句のひとつでもある。陽が重なると書くが、中国では奇数が陽数、偶数が陰数と呼ばれ、1月1日(元旦)、3月3日(上巳)、5月5日(端午)、7月7日(七夕)など陽数の重なる節目の日に様々な行事を行ってきた。最大陽数である「9」が重なることから「重陽」(ちょうよう)と呼ぶようになった。かつてこの日は、「菊の節句」の名の通り、平安時代は「観菊の宴」も催され、菊の花を飾ったり、菊酒(花びらにビタミンC.Eを含む)を飲み、邪気を払い、長寿を祈ったと言われる。そこから現在、中国では旧暦の9月9日は「老年節」(敬老の日のようなもの)と呼ばれている。日本では旧暦はすっかり影を潜めているが、中国では現在でも祝日や誕生日など旧暦が日常生活に用いられている。
 CODEが震災直後から支援している北川県光明村で「重陽節」の祭りを兼ねた「中日友好聯歓会」を開催した。震災後から今回で3回目になるが、村の財政不足やそれぞれの経済的事情によって中止という話もあったが、老年活動クラブや村人有志の熱い希望とボランティアの協力で実現する事になった。
老年節という事で客席の最前列には村の高齢のじいちゃん、ばあちゃんの席が用意され、チャン族の伝統的な音楽、踊りに始まり、村人の歌や芝居、そして日本人、韓国人、中国人ボランティアの歌なども披露され、その後の宴まで大いに盛り上がった。最終演目の「朋友」(友達)という中国語の歌を全員で歌い終わった後、僕らがそでに下がろうとした時、「そのまま!」と呼び止められた。すると、村で一番の仲良しであるお母さん、Xさん(38歳 女性)から大きな額をプレゼントされた。そこには「中日友好一家親」(家族のような中日友好を!)と刺繍で書かれてあった。このXさんは、村の中でもひときわ経済的に大変な状況にあり、再建した自宅も資金不足ゆえに未だ2階部分は完成していない。そんな状況の中、この日の為に数カ月もかけてコツコツと刺繍を仕上げたと思うと涙が溢れた。最近よく、Xさんは、「何もしなくていい。ボランティアの皆が顔を見せに来てくれるだけでいい。」とつぶやく。やはり、目の前のひとりひとりと確実につながっていく事が本当の国際理解を創り出していくのだろう。
 奇しくも、この祭りの行われた10月16日の同時時刻、四川省の省都、成都で大規模な反日デモが行われた。被災地の小さな農村では暖かい祭りが行われ、一方では過激なデモが行われる。日本にいると一部の報道が、すべてであるように思ってしまう。
震災は、これまでの価値観を大きく転換する機会にもなると言われているはずなのに。。。