青海省地震レポート26

チベット人は仏教を深く信仰している。
玉樹州結古鎮のシンボルでもある結古寺(ジェグ・ゴンパ)は、チベット仏教サキャ派の寺院で街の北東の丘の上に位置し、街のどこからでも見る事が出来る。このシンボルも地震によって大きな被害を出した。
僧侶が8名亡くなり、本堂や静修院(瞑想などを行う場所)も倒壊し、約500人の僧侶の住む僧坊も至る所に亀裂が入った。今後、使用する事は不可能である。この結古寺の僧侶はいち早く、街に降りて、ガレキの中から生存者の救出、物資の配給、犠牲者の葬儀など被災者の救援活動を精力的に行った。
僕らが結古寺を訪れた時、僧侶達は倒壊した寺院から持ちだした仏像や法具などをプレハブの仮設に運んでいた。このプレハブは広東省のライオンズクラブ(獅子会)の寄贈されたもので、本堂と周囲にコの字型の僧坊がプレハブが僧侶自らの手で建設されている。この日、仮設の本堂では「砂マンダラ」が僧侶達によって制作されていた。僕らは幸運な事にこの制作過程を見る事が出来た。一人の僧侶が経典に記された通りの色を指示し、沢山の僧侶の手によって下書きの通りに色砂が盛られ、その上にまた違う色砂を盛ってデザインされていく。様々な色に彩られて非常に美しい砂絵が出来あがっていく。
完成した5つの「砂マンダラ」は、15日間展示して被災者に参観してもらった後、取り壊し、この色砂を被災者に分け与えるという。
この「砂マンダラ」は、須弥山世界(仏教の宇宙観)を表し、通常、完成した瞬間に取り壊される。永遠なるものはない。諸行無常を表しているという。
被災して間もないこの時期に何よりも先に「砂マンダラ」を作る僧侶たち。
寺は「砂マンダラ」で被災者に喜びや希望を与える。そして被災者は寺を支える事で自ら元気になっていく。まさに支え合いの中でチベット仏教は脈々と受け継がれてきた。
信仰深いチベット人にとって仏教や寺は暮らしの一部になっている。

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