青海省地震では、2200人以上の方々が僧侶や遺族に見送られて天へと還っていった。
震災が奪ったものは、人命だけではなかった。チベットの人々の生活に欠かせないヤク(チベット牛)、羊、馬などの家畜の命も奪った。4万頭以上が死んだという報道もある。中でもヤクの被害はチベット人にとって生活の上で大きなダメージを与えたに違いない。
標高3000~6000mの高地で生息するヤク(チベット語ではオスのみをさす。英語名:YAK)は、全世界の約1万4000頭うち1万3000頭がこのチベット高原にいると言われる。そのほとんどはチベット人によって飼育され、野生のヤクは数百頭のみで絶滅の危機にあり、中国では国家一級重点保護野生動物に指定されている。体長2~3m、重さ300~800kgの堂々とした体格の割におとなしい動物である。それは家畜化した事によるそうだが、本来は気性の荒い動物である。ヤクは高地の極寒で生きるために全身を黒い毛で覆い、体温保持のために4つの胃をもち、酸素の薄い高地でも大量の空気を吸うために肋骨も他の動物より多いそうだ。
チベット人達に生活には、このヤクがあらゆるところまで浸透している。半農半牧の彼らの暮らしには耕作や運搬にヤクは大きな力を発揮する。また、ヤクの乳からバター茶やヨーグルトを作る。チベット寺院の灯明もこのバターである。チベット寺院には必ず三角錐に固められたバターのロウソクが置いてあり、僧堂には常にヤクバターの匂いが漂っている。また、赤身の多いその肉は、貴重なタンパク源で、脂も少なく、美味しい。その皮や毛(外側)は、遊牧民には欠かせないテント(バという)やロープとして使い、内側の柔らかい毛は衣服や毛布になる。一頭のヤクからわずか100gしかとれないヤクダウンは非常に貴重なものである。そして、その糞は高地では希少な燃料として、住宅の外壁として使用される。この繊維の多いこの糞で皿も洗う。昔、草原でチベットの子どもとこの糞を投げ合って遊んだ事があるが、高地特有の紫外線や乾燥によるのだろうか、悪臭は全くない。まさにヤクは捨てるところがない。
このように高地の遊牧民、チベット人にとってヤクは切っても切れない存在である。震災で家畜を失った被災者にとってヤクなどの家畜は、チベット人らしい「暮らしの再建」の上で非常に大きな意味を持つだろう。
現時点での被害状況 (24日夕刻 青海新聞網)
死者:2203人
行方不明:73人
中国青海省地震レポート No.9
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