天空の被災地、玉樹は標高約3700mの高地である。中国各地からの約1万人の救援隊も高山病(中国語で高山反応)に苦しめられている。中国南部の広東省の救援隊約300人も19日に撤退したようだ。広東省や山東省などの低地の救援隊には過酷すぎたのであろう。捜索犬もこの高地には順応できないようだ。不幸な事に取材中の北京の記者も高山病の症状を訴え、帰らぬ人となった。やはり高地慣れしたチベット人の救援隊やボランティアを有効に活用すべきなのだろう。
また、17日頃より非常に不安定な天候になってきている。夜は氷点下にまで下がり、一部のエリアでは降雪も見られる。極寒に加え、砂嵐にも悩まされている。被災者が身を寄せるテントも破損したり、吹き飛ばされたりしている。以前、チベットでこの砂嵐に遭遇した事があるが、大粒の砂が舞い上がり、体に叩きつけるのでとにかく痛い。目をあける事も出来ずに僕は車に逃げ込んだが、チベットの人々は車の荷台で毛布に包まり、必死に耐えていた姿に逞しさを感じた。このように被災者にはもちろん、救援者にとっても非常に過酷な被災地である。
*チベットの気候・風土について
チベットには「1日に四季がある」と言われ、1日の気温差が激しい。日中、太陽のある時は日差しが強く暖かく感じるが、その日差しは体力を奪う。そして体の水分を絞り取るように乾燥していく。次第に唇などがひび割れてくる。そして日没から一気に氷点下に冷え込んでいく。1年を通して乾季と雨季に分かれるが、乾季の天候は比較的安定していているが、とにかく乾燥との闘いである。
体が乾燥すると高山病を引き起こしやすくなる。高山病は、空気中の酸素の低下によって頭痛、めまい、吐き気、発熱など風邪に似た症状が見られる。高山病に対する特効薬はないと言われ、ダイアモックス(呼吸中枢を刺激する予防薬)や酸素吸入などはあくまで対症療法でしかない。標高の低い所に移動すればすぐに症状は軽減される。救援隊のように低地から飛行機で3700mの高地に降り立った場合は、体が順応出来ずに高山病を引き起こしやすくなる。徐々に高度を上げながら移動すると高地順応していく。また、その人のその時の体調によっても変化するので日頃からの体調管理が求められる。水分、塩分補給、乾燥を防ぐ「バター茶」こそがまさに予防薬なのである。チベット人の暮らしの中に高地で生きる様々な智恵が盛り込まれているのである。
被災地は6月頃には雨季に入る。それまでには安定した住環境が求められる。
*現時点の被害状況 (20日夕刻 人民網)
死者:2064人
行方不明:175人
負傷者:12135人(うち重傷者1434人)
中国青海省地震レポート No.5
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