【フィリピン台風30号】救援ニュース No.27

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フィリピン台風30号(Haiyan) 救援ニュース No.27
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『台風に備えて』
 私が第1次派遣隊としてセブ島北部、パナイ島を調査した10日間の中で、「台風が来ることは知っていたため、事前の備えをしていた。」という言葉がよく聞かれた。台風30号(Haiyan)は上陸前から「スーパータイフーン(勢力の強い台風)」として警戒されており、政府も万全の対策をもって台風の上陸に備えていた。例えばパナイ島北部のカリボ市では上陸の2日以上前から避難勧告が出ていた。
 しかし、「避難勧告は出ていたが、まだ風が強くなかったので避難しなかった。」とロハス市でスクラップを転売して生計を立てる女性は言っている。彼女は避難勧告が早すぎて危機を感じなかったために避難せず、台風が来る頃には家から出られなくなってしまった。
 セブ北部やパナイ島北部の町を見てみると特に防災無線のようなものは無く、行政職員がメガホンで避難を呼びかけるだけだったという。フィリピンで一番小さい行政単位であるバランガイでも、だいたい1500人から3000人の人口を抱えるため、呼びかけてまわるだけでは聞こえていない人もいるはずだ。
 住民も台風が来るとわかって家屋の屋根や壁をロープで固定して、風に飛ばされないようにするなどの対策をしていたが、結果的にはこの対策はあまり意味がなかったとカリボ市の住民は述べている。しかし決して台風を甘く見ていたわけではなく、彼らができる最大限の台風への備えをしたのだろう。台風に備えようとする意識を今回の台風以前から持っていると感じた。だからこそ、その気持ちを最大限に活かした備えができなかったことがもったいない。
 フィリピンにはお互いに助け合おうとする「バヤニハン」という考えがある。これは防災対策を学べば近隣住民で共有し合い、非常時にはお互いに避難や対策を呼び掛け合い、ともに備えにあたる土壌となる。もし避難場所である学校が今回の台風に耐えることができれば、もし防災無線での避難指示ができれば、もし風に強い家屋の補強ができていればと非常に強く感じた。(上野智彦)