イタリア中部地震支援ニュース13

前回、地震発生からちょうど一か月の日に報告会をした、ということをお伝えし ました。 その時に特別ゲストとして3名のプロのクラウンが参加しました。ここで、報告 会時に共有された『クラウン』の歴史や『ドクタークラウン』についての基礎知 識をおさらいしておきます。
クラウンについては三つの潮流を受け継いできている、といわれています。
一つ目はクラウンの原点呼ばれているブッフォン・宮廷道化師の存在です。これは主に欧州において、古代から中世にかけて活躍した皇帝の道楽役兼インテリ役です。絶対的な存在である王様や貴族階級の人に対して、世の中の出来事をおかしく喜劇的に表現した者。一方で報道者として、一方では享楽を与える者として、ある意味では王を『裸の王様』に仕立てあげることのできる特異な存在だったのです。ブッフォンについて特筆すべきは、彼らが往々にして、極端に背の低い小人であったり大きな身体的特徴を持っていたりした人達だったことです。彼らは当時の社会の異端者であったのですが、ブッフォンの意味からすればその身体的『特長』を生かした(現代社会では障がい者として保護の対象と捉えられる傾向にあるが)活躍の場があったわけです。
二つ目の視点としてはイタリアの古典喜劇コメディア・デラルタの中での役割です。これは16世紀頃にイタリアで生まれた即興演劇で、道化役が極めて重要な立場を担っています。
三つ目はサーカスでの役割。これは想像に易いと思いますが、緊張感のある芸が多い会場を、失敗・滑稽・安らぎなどで笑いを引き起こす役割です。
クラウン(道化師)と聞くと、日本ですぐイメージされるのはピエロです。実はこのピエロというのはクラウンの歴史の流れの中にある一つのキャラクターにすぎません。ピエロは、好きな人にフラれ、人生失敗ばかり。しかし、そんなキャラクターに愛情を向けてしまうのが日本の精神にあるのでしょう。判官贔屓(ほうがんびいき)という感情を持つ傾向にある日本では(報告会の中では、これはまさに演歌の世界だ!という指摘も)このピエロの役がピッタリ社会に馴染んだのでしょう。
クラウン(道化師)=ピエロのステレオタイプが出来上がったのは、このような経緯も関係しているのでしょう。
クラウンの活動がどこまで日本に影響を及ぼすのか、コミュニケーション不足といわれている現代社会に一石を投じるような、第四の潮流を汲んでいくとことを大いに期待します。
現在、被災地のボランティアによる「こころのケア」とクラウン活動の関係性を探っているところです。日本では緊急クラウン、クリニクラウン、ホスピタルクラウン、ケアリングクラウン等の団体が素晴らしい活動を続けています。