今夏は四川省でも雷が轟き、激しい雨が降る日が例年になく多い。
11日から12日にかけて甘粛省や四川省では、大雨によってまた犠牲者が出た。舟曲県でも再び土石流が発生し、3名が行方不明なった。また、舟曲県から白龍江を下った隴南市でも死者10人、行方不明者12人、負傷者24人という被害が出た。また四川省綿竹市でも5人が亡くなった。ここは、08年の四川大地震の重災区(激甚災害地域)の漢旺から山を入った清平という山あいの郷村で、地震直後と同じように地滑りをした斜面を被災者が避難している姿が報道された。
また、被災から1週間を経た15日、中国国内各地はもちろん海外の華僑の人々の間でも追悼式が粛々と催され、甘粛省舟曲県の土石流災害で犠牲に遇った人々へ黙祷が一斉に捧げられた。
中国の現在の著しい経済発展と逆行するかのように近年、地震、水害、干ばつ、雪害などの自然災害が絶え間なく発生している。しかもその被災地は皆、国家の一大プロジェクトである西部大開発の実施地ばかりである。中国に限った事ではないが、近年の急速な経済発展をどこか嘲笑うかのように自然災害によってその脆弱さが露呈している。
国土の広い中国では、人間の居住できるエリアは非常に限られている。地図で黒竜江省の北東から雲南省の南西に斜めに線を引くと人口の約94%は東南部に集中していると言われるほど北部、西部は人間の居住に適していない場所が多い。しかも、チベット自治区、四川省、青海省、甘粛省、雲南省などのような地殻変動によって隆起した青蔵高原は、1000km以上の巨大断層のある地震多発地帯でもある。このエリアでもある舟曲県では、土石流を起こした急峻な斜面にも多くの人が住んでいた。
急速な経済発展の一方で、人口、食糧、環境の問題に加え、災害の多発する中国。今後、人はどこでどのような暮らしをすべきなのかという事を真剣に考えなくてはいけない時期に来ている。
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甘粛省土石流災害レポート5
9日、甘粛省政府は、被災者に対しての生活支援として以下のように発表した。
緊急避難した各被災者に対して一人当たり150元(約2000円)を支給、そして四川大地震や青海省地震際と同じように一人当たり1日10元(約130円)の生活補助金と500グラムのお米を3カ月間支給。そして「三孤」(一人きりの高齢者、障害者、子ども)に対しては、一人当たり毎月800元(約1万円)を3カ月間支給し、その後も通常の社会保障の基準で補助する。また、亡くなった方々への弔慰金と葬儀費用として一人の犠牲者に対して8000元(約10万円)を遺族に支給すると発表した。その他、住宅補助として農村部の全半壊の家屋に対して要再建の場合に平均2万元(約26万円)の補助、要補修の場合は4000元(約5万2000円)、街の全半壊の家屋に対しては、平均2万5000元(約32万5000円)の補助を行う。
2008年5月の四川大地震以降、2010年4月の青海省地震を経て、政府
の被災者に対する生活支援のあり方や基準が定着してきた。もちろんすべてを失った被災者に対しての経済的な支援も必要である事は言うまでもないが、今後の復興の過程で単に義捐金を支給するだけでなく、もっともっと被災者に寄り添ったきめ細かな支援のありようが問われてくるだろう。その為には政府だけでなく、民間のNGOやボランティアの多様なかかわりが必要になってくる。中国では災害救援の中で「八方支援」という言葉を常用するが、本当の意味での多様な「八方支援」を期待したい。
甘粛省土石流災害レポート4
8月7日 夜22時頃から雨が降り始め、約12時頃に土石流が発生した。
被災者の中にはすでに就寝していた人の多かった事も被害拡大の一因でもある。舟曲県の平均降雨量が500mmと言われるが、7日夜から激しく降り続いた雨は最大約900mmの降雨量になったと言われる。やはりゲリラ的な豪雨だったのだろう。
過去にこの舟曲県は水害に襲われている。
1992年6月には豪雨によって87人が死傷、344間(344の部屋)が被害を受けた。また1989年5月には土石流が発生し、51人が負傷した。そして1961年には28人が死傷、160間の家屋被害が出ている。
今年、中国では、長江流域や吉林省などで水害が多発している。その被害は、死者1450人、行方不明669人、被災者は2億人と言われる。当然この舟曲県の土石流被害はその数に含まれていない。
中国のある地質専門家は、雨が降り出し、土石流が発生するまでの間、的確な予報がなかった事が被害を拡大させた原因の一つであると述べている。過去に被害に遭っていてもきっと注意警報や避難指示のようなシステムさえ現地にはなかったのではないかと思われる。
甘粛省土石流災害レポート3
改めて被災地、舟曲県の街の概要を整理してみる。
甘粛省甘南チベット族自治州は甘粛省の東南部に位置し、すぐ南の山を越えれば、四川省の世界遺産のある九寨溝県である。舟曲県の総面積は、3010平方キロメートル、20の郷、2つの鎮、2010の村があり、県の総人口は約13万5900人である。このうちチベット族は、約4万4000人といわれる。また農業人口は1約1万8800人と言われる。舟曲県は、標高1200m~4500mの間に位置し、四方を山に囲まれた峡谷の小さな街である。
9日夜の時点での被害状況は、死者137人、88人が負傷(うち31人の重傷者は省都、蘭州へと搬送された)、そして未だ1348人が行方不明である。また、隴南市など下流域の約1万9400人対して緊急避難指示が出された。家屋被害は、倒壊家屋約300戸、危険家屋約700戸、浸水家屋3000戸と報道された。(CCTV)
被災地と外部をつなぐ「生命線」である省道313号線も土石流に埋まった。現在、軍によって重機で泥の撤去作業が行われている。この土石流による被災者は約5万人と言われる。という事は、県全体の人口の半分近くが被災した事になる。
甘粛省土石流災害レポート2
舟曲県県城のメインストリートのビルも2階ほどまで水に浸かっているのがTVの映像から確認される。報道によると2m以上の土石流に襲われ、県城の3分の2の面積が埋まったという。また、地震の被害かと思うほどにビルが倒壊している姿がその激しさを物語る。7日の夜からビルに閉じ込められていた被災者たちの中には、水が引き始めた9日、二日ぶりにようやく救出された人々もいる。
9日、温家宝首相が現地入りした。土砂に埋まった現場で必死の救助活動が行われる中、温首相は、ガレキの隙間から被災者に「頑張れ!」と声をかける姿や負傷者を見舞う姿が報道された。今もガレキの下で救援を待つ人々がいる。雨が降ると再び土石流が発生すると言われる中、一刻も早い救出が望まれる。
舟曲県城の周辺は急峻な山々に囲まれ、その間を縫うように白龍江が流れている。7日の夜から降りだしたゲリラ豪雨は、周辺の山々に地滑りを引き起こし、その土砂は白龍江へと流れ出し、「暴れ川」へと変貌させた。
実は、舟曲県は、2008年5月の四川大地震の甘粛省の被災地8県の1つ「重災区」である。9日夕刻のCCTVのニュースでは、舟曲県周辺は、地滑り、土石流、地震の多発地帯であるとし、2008年の地震で山肌が緩んでいた事が、今回の土石流災害を拡大させた原因の一つであると報道した。
甘粛省土石流災害レポート1
四川省にいるYさんより甘粛省土石流災害レポートが届きましたので、ご紹介します。
CODEは引き続き情報収集に努めます。
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8月7日の夜から8日の朝にかけて降り続いた豪雨は、大規模な土石流を引き起こした。甘粛省甘南チベット族自治州舟曲県を中心に、死者127人、負傷者117人、行方不明1294人(8月8日夜時点)という大きな被害を出した。
舟曲県城(中心の町)やその周辺だけでも約300棟の家屋が土石流に飲み込まれ、約20棟の家屋が倒壊したと言われる。
CCTV(中央電視台)は、連日、舟曲県の被災地の様子を報道している。豪雨によって舟曲県城の中心を流れる白龍江の上流で堰止め湖が出来、それが一気に土石流として県城を襲った。TVからは、倒壊、傾斜したビルの様子から土石流の勢いが想像される。また、一面、土に埋もれた廃墟の中から生存者が軍によって救出されるシーンや倒壊したビルに閉じ込められた被災者が8時間後に、30時間後、74歳の老人が救出無事救出された映像などが報道されている。
国家減災委員会は、8日朝、「国家3級救災」としたが、夕刻に「国家2級救災」に引き上げ、事態を深刻に捉え、温家宝首相も被災地へと向かった。
中国では、「特大山洪泥石流災害」(特大土石流災害)と呼び、国を挙げて救援活動を開始している。雲南、四川などから武装警察が現地に向かい、深センでは義捐金の支援を発表、甘粛省の紅十字が救援物資など運搬し、9日には約13000人分のテントが張られた。
蘭州の軍区から約2300の兵が派遣され、堰止め湖の爆破に成功し、水位は下がり始めたが、気象予報では、数日後にはまた雨が降ると言われている。まだまだ予断を許さない状況である。